強弱記号

絶対強弱記号は音符の後にコマンドを用いて – c4\ff などのように – 指定します。 利用可能な強弱記号は \ppppp, \pppp, \ppp, \pp, \p, \mp, \mf, \f, \ff, \fff, \ffff, \fffff, \fp, \sf, \sff, \sp, \spp, \sfz, \rfz, それに \n です。 強弱記号を手動で譜の上または下に配置することもできます – 向きと配置 を参照してください。

\relative c'' {
  c2\ppp c\mp
  c2\rfz c^\mf
  c2_\spp c^\ff
}

[image of music]

クレッシェンド 記号は \< で始まり、\!、絶対強弱記号あるいは追加のクレッシェンド記号またはデクレッシェンド記号で終わります。デクレッシェンド 記号は \> で始まり、\!、絶対強弱記号あるいは次のクレッシェンド記号またはデクレッシェンド記号で終わります。\cr\decr\<\> の代わりに用いることができます。 また、クレッシェンド記号やデクレッシェンド記号の終点に、それぞれ \endcr\enddecr\! の代わりに用いることもできます。この記譜法を用いるとデフォルトでは ヘアピン が譜刻されます。

\relative c'' {
  c2\< c\!
  d2\< d\f
  e2\< e\>
  f2\> f\!
  e2\> e\mp
  d2\> d\>
  c1\!
}

[image of music]

\! で終了するヘアピンは、\! が割り当てられた音符の右端で終了します。次の クレッシェンド または デクレッシェンド 記号の開始によってヘアピンが終了する場合、そのヘアピンは次の \< または \> が割り当てられた音符の中央で終了します。次のへアピンは、通常通りに音符の左端で始まる代わりに、右端から始まります。1 拍目で終わるヘアピンは、前の小節線のところで終了します。

\relative {
  c''1\< | c4 a c\< a | c4 a c\! a\< | c4 a c a\!
}

[image of music]

\! の代わりに絶対強弱記号で終了するヘアピンも同じように譜刻されます。しかしながら、絶対強弱記号の幅によってヘアピンの終了点は変わります。

\relative {
  c''1\< | c4 a c\mf a | c1\< | c4 a c\ffff a
}

[image of music]

1 つの音符に複数の記号を譜刻するには、空白休符を用いる必要があります。これは特に、同じ音符に クレッシェンドデクレッシェンド を付ける場合に有用です。

\relative {
  c''4\< c\! d\> e\!
  << f1 { s4 s4\< s4\> s4\! } >>
}

[image of music]

\espressivo コマンドを用いて、同じ音符にクレッシェンドとデクレッシェンドを付けることができます。しかしながら、これは強弱記号ではなくアーティキュレーションとして実装されているということに注意してください。

\relative {
  c''2 b4 a
  g1\espressivo
}

[image of music]

テキストのクレッシェンド記号は \cresc で開始します。テキストのデクレッシェンド記号は \decresc または \dim で開始します。必要に応じて延長線が譜刻されます。

\relative {
  g'8\cresc a b c b c d e\mf |
  f8\decresc e d c e\> d c b |
  a1\dim ~ |
  a2. r4\! |
}

[image of music]

強弱のテキスト符号の変更でヘアピンを置換することもできます:

\relative c'' {
  \crescTextCresc
  c4\< d e f\! |
  \dimTextDecresc
  g4\> e d c\! |
  \dimTextDecr
  e4\> d c b\! |
  \dimTextDim
  d4\> c b a\! |
  \crescHairpin
  \dimHairpin
  c4\< d\! e\> d\! |
}

[image of music]

新たに絶対強弱記号や強弱に対応させるテキストを作成するには、新たな強弱記号 を参照してください。

強弱記号の垂直方向の位置は DynamicLineSpanner によって処理されます。

Dynamics を用いて水平線上に強弱記号を譜刻することができます。タイミングを示すために空白休符を使用します。(Dynamics コンテキスト内の音符は音楽的時間を取りますが、譜刻されません。)Dynamics コンテキストはテキスト スクリプト、テキスト スパナ、ピアノ ペダル記号などを保持することができ、有用です。

<<
  \new Staff \relative {
    c'2 d4 e |
    c4 e e,2 |
    g'4 a g a |
    c1 |
  }
  \new Dynamics {
    s1\< |
    s1\f |
    s2\dim s2-"rit." |
    s1\p |
  }
>>

[image of music]

定義済みコマンド

\dynamicUp, \dynamicDown, \dynamicNeutral, \crescTextCresc, \dimTextDim, \dimTextDecr, \dimTextDecresc, \crescHairpin, \dimHairpin

Selected Snippets

小節線にぶつかるヘアピンの挙動を設定する

ヘアピンの終端となる音符が強拍にある場合、ヘアピンはその前にある小節線の直前が終端となります。この挙動は to-barline プロパティをオーバライドすることで調整できます。

\relative c'' {
  e4\< e2.
  e1\!
  \override Hairpin.to-barline = ##f
  e4\< e2.
  e1\!
}

[image of music]

ヘアピンの最小長さをセットする

ヘアピンが短すぎる場合、Hairpin オブジェクトの minimum-length プロパティを変更することで長くすることができます。

<<
  {
    \after 4 \< \after 2 \> \after 2. \! f'1
    \override Hairpin.minimum-length = 8
    \after 4 \< \after 2 \> \after 2. \! f'1
  }
  {
    \repeat unfold 8 c'4
  }
>>

[image of music]

ヘアピンの端点を移動する

ヘアピンの端点は Hairpin オブジェクトの shorten-pair をセットすることで移動できます。正の値は端点を右に移動し、負の値は左に移動します。minimum-length プロパティとは異なり、このプロパティはヘアピンのみの見た目に影響します。水平方向のスペーシングには影響しません (始点や終点にある強弱記号もです)。そのため、この方法はヘアピンを割り当てられた領域の中で微調整するのに適しています。

{
  c'1~\<
  c'2~ c'\!
  \once \override Hairpin.shorten-pair = #'(2 . 2)
  c'1~\<
  c'2~ c'\!
  \once \override Hairpin.shorten-pair = #'(-2 . -2)
  c'1~\<
  c'2~ c'\!
  c'1~\p-\tweak shorten-pair #'(2 . 0)\<
  c'2~ c'\ffff
}

[image of music]

ヘアピンの表示に al niente 記譜法を用いる

ヘアピン強弱記号は、Hairpin オブジェクトの circled-tip プロパティを #t にセットすることで、端に丸を付けて (“al niente” 記譜法) 表示することができます。

\relative c'' {
  \override Hairpin.circled-tip = ##t
  c2\< c\!
  c4\> c\< c2\!
}

[image of music]

ヘアピンを様々なスタイルで表示する

ヘアピン強弱記号は様々なスタイルで作成できます。

\paper { tagline = ##f }

\relative c'' {
  \override Hairpin.stencil = #flared-hairpin
  a4\< a a a\f
  a4\p\< a a a\ff
  a4\sfz\< a a a\!
  \override Hairpin.stencil = #constante-hairpin
  a4\< a a a\f
  a4\p\< a a a\ff
  a4\sfz\< a a a\!
  \override Hairpin.stencil = #flared-hairpin
  a4\> a a a\f
  a4\p\> a a a\ff
  a4\sfz\> a a a\!
  \override Hairpin.stencil = #constante-hairpin
  a4\> a a a\f
  a4\p\> a a a\ff
  a4\sfz\> a a a\!
}

[image of music]

強弱記号やテキスト スクリプトを縦方向に揃える

全ての DynamicLineSpanner オブジェクト (ヘアピンや強弱記号テキスト) は、他のアイテムが邪魔しない限り、譜から少なくとも staff-padding だけ離れた基準線に配置されます。staff-padding を十分に大きくすると、強弱記号を揃えることができます。

また、\textLengthOn を用いて、テキスト スクリプトをベースラインに揃えることができます。

music = \relative c' {
  a'2\p b\f
  e4\p f\f\> g, b\p
  c2^\markup { \huge gorgeous } c^\markup { \huge fantastic }
}

{
  \music
  \break
  \override DynamicLineSpanner.staff-padding = 3
  \textLengthOn
  \override TextScript.staff-padding = 1
  \music
}

\paper { tagline = ##f }

[image of music]

テキスト強弱記号の線を隠す

(cresc. や dim. のような) 強弱を変更するテキストは、その範囲を破線で示しています。次のようにしてこの線を表示しないようにすることができます。

\relative c'' {
  \override DynamicTextSpanner.style = #'none
  \crescTextCresc
  c1\< | d | b | c\!
}

[image of music]

テキストによる強弱記号のテキストとスパナのスタイルを変更する

クレッシェンドやデクレッシェンドに使われるテキストは crescendoText, decrescendoText コンテキスト プロパティをセットすることで変更できます。

スパナの線は、DynamicTextSpannerstyle プロパティをセットすることでスタイルを変更できます。デフォルトの値は 'dashed-line であり、他に 'line, 'dotted-line, 'none が設定できます。

\relative c'' {
  \set crescendoText = \markup { \italic { cresc. poco } }
  \set crescendoSpanner = #'text
  \override DynamicTextSpanner.style = #'dotted-line
  a2\< a
  a2 a
  a2 a
  a2 a\mf
}

[image of music]

参照

音楽用語集: al niente, crescendo, decrescendo, hairpin

学習マニュアル: アーティキュレーションと強弱記号

記譜法リファレンス: 向きと配置, 新たな強弱記号, MIDI 出力をより良くする, MIDI での音の強弱を制御する

コード断片集: 発想記号

内部リファレンス: DynamicText, Hairpin, DynamicLineSpanner, Dynamics


LilyPond 記譜法リファレンス v2.25.22 (development-branch).