break-visibility を用いる

たいていのレイアウト オブジェクトは 1 回だけ描画されます。しかしながら、小節線、音部記号、拍子記号、それに調号などのオブジェクトは、改行が起こると 2 回描画する必要があります – 行の最後で 1 回、次の行の最初でもう 1 回。そのようなオブジェクトは 改行可能 と呼ばれ、それらのオブジェクトが描画される可能性がある 3 つの場所 – 行の先頭、行の途中 (それらが変更された場合)、それに、行の最後 (そこで変更が行われた場合) – における可視性を制御する break-visibility プロパティを持ちます。

例えば、デフォルトでは拍子記号は最初の行の先頭で描画されますが、変更されない限り他の場所には描画されません。変更された場合、拍子記号は変更が行われた場所に描画されます。この変更が行の最後で行われた場合、新しい拍子記号は次の行の先頭に描画され、その前の行の最後にも忠告の拍子記号が描画されます。

この振る舞いは break-visibility プロパティによって制御されます。このプロパティについての説明は オブジェクトの可視性と色 を参照してください。このプロパティは 3 つのブール値からなるベクトルをとり、順に、そのオブジェクトが行の最後で描画されるかどうか、行の途中で描画されるかどうか、そして、行の先頭で描画されるかどうかを決定します。より正確には、改行の前、改行がない場合、改行の後です。

break-visibility プロパティによって制御する代わりに、これら 8 通りの組み合わせを scm/output-lib.scm で定義されている定義済み関数によって指定することもできます。このファイルの中で、最後の 3 列がその列のヘッダで示される場所での可視性を表しています:

関数形式ベクトル形式改行前改行なし改行後
all-visible#(#t #t #t)yesyesyes
begin-of-line-visible#(#f #f #t)nonoyes
center-visible#(#f #t #f)noyesno
end-of-line-visible#(#t #f #f)yesnono
begin-of-line-invisible#(#t #t #f)yesyesno
center-invisible#(#t #f #t)yesnoyes
end-of-line-invisible#(#f #t #t)noyesyes
all-invisible#(#f #f #f)nonono

break-visibility のデフォルト設定はレイアウト オブジェクトによって異なります。以下の表は、break-visibility によって影響をうけるすべてのレイアウト オブジェクトと、そのプロパティのデフォルト設定を示しています:

レイアウト オブジェクト通常のコンテキストデフォルト設定
BarLineScorecalculated
BarNumberScorebegin-of-line-visible
BreathingSignVoicebegin-of-line-invisible
ClefStaffbegin-of-line-visible
CustosStaffend-of-line-visible
DoublePercentRepeatVoicebegin-of-line-invisible
KeyCancellationStaffbegin-of-line-invisible
KeySignatureStaffbegin-of-line-visible
ClefModifierStaffbegin-of-line-visible
RehearsalMarkScoreend-of-line-invisible
TimeSignatureStaffall-visible

以下の例は、小節線の可視性を制御するベクトルの使用方法を示しています:

\relative {
  f'4 g a b
  f4 g a b
  % カレント行の最後で小節線を削除します
  \once \override Score.BarLine.break-visibility = ##(#f #t #t)
  \break
  f4 g a b
  f4 g a b
}

[image of music]

break-visibility をオーバライドするために使用されるベクトルの要素 3 つをすべて記述する必要がありますが、それらすべてが各レイアウト オブジェクトに対して効果を持つわけではなく、組み合わせによってはエラーになる場合もあります。以下の制限があります:


LilyPond 記譜法リファレンス v2.25.15 (開発版).