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1.3.3 直線の発想記号
このセクションでは直線的な軌道をとるさまざまな発想記号 – グリッサンド、アルペジオそれにトリル – を作成する方法について説明します。
グリッサンド | ||
アルペジオ | ||
トリル |
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グリッサンド
グリッサンド は音符の後に \glissando
を付けることによって作成されます:
\relative { g'2\glissando g' c2\glissando c, \afterGrace f,1\glissando f'16 }
グリッサンドは譜を跨いで音符を結ぶことができます:
\new PianoStaff << \new Staff = "right" { e'''2\glissando \change Staff = "left" a,,4\glissando \change Staff = "right" b''8 r | } \new Staff = "left" { \clef bass s1 } >>
グリッサンドは和音の中にある音符を結ぶことができます。2 つの和音の音符を平行に 1 対 1 で結ぶのではない場合、
\glissandoMap
を設定することで、結び方を定義する必要があります。和音の音符は入力ファイル ‘.ly’ で出現する順に 0, 1, … と番号が付きます。
\relative { <c' e>1\glissando g' | <c, e>1\glissando | <g' b> | \break \set glissandoMap = #'((0 . 1) (1 . 0)) <c, g'>1\glissando | <d a'> | \set glissandoMap = #'((0 . 0) (0 . 1) (0 . 2)) c1\glissando | <d f a> | \set glissandoMap = #'((2 . 0) (1 . 0) (0 . 1)) <f d a'>1\glissando | <c c'> | }
異なるスタイルのグリッサンドを作成することもできます。詳細は ライン スタイル を参照してください。
Selected Snippets
現代のグリッサンド
終端の音符が存在しない現代のグリッサンドは、不可視の音符とカデンツァを使用することで作ることができます。
\relative c'' { \time 3/4 \override Glissando.style = #'zigzag c4 c \cadenzaOn c4\glissando \hideNotes c,,4 \unHideNotes \cadenzaOff \bar "|" }
長いグリッサンドにタイミング マークを追加する
長いグリッサンド部分の拍をタイミング マークで表示する場合があります。これは通例符頭が無く符幹だけの音符として表され、この中間部分に発想記号を付け加えることもできます。
符幹がグリッサンドにうまく揃わない場合には、わずかに配置を調整する必要があるかもしれません。
glissandoSkipOn = { \override NoteColumn.glissando-skip = ##t \hide NoteHead \override NoteHead.no-ledgers = ##t } glissandoSkipOff = { \revert NoteColumn.glissando-skip \undo \hide NoteHead \revert NoteHead.no-ledgers } \relative c'' { r8 f8\glissando \glissandoSkipOn f4 g a a8\noBeam \glissandoSkipOff a8 r8 f8\glissando \glissandoSkipOn g4 a8 \glissandoSkipOff a8 | r4 f\glissando \< \glissandoSkipOn a4\f \> \glissandoSkipOff b8\! r | }
グリッサンドを改行できるようにする
after-line-breaking
と共に breakable
プロパティを #t
にすることで、グリッサンドの途中で改行することができます。
glissandoSkipOn = { \override NoteColumn.glissando-skip = ##t \hide NoteHead \override NoteHead.no-ledgers = ##t } \relative c'' { \override Glissando.breakable = ##t \override Glissando.after-line-breaking = ##t f1\glissando | \break a4 r2. | f1\glissando \once \glissandoSkipOn \break a2 a4 r4 | }
繰り返しにまたがるグリッサンド
複数の \alternative
ブロックにまたがるグリッサンドは、\alternative
ブロックの始まりに見えない装飾音符を配置し、グリッサンドを付加することで模倣することができます。装飾音符のピッチはグリッサンドの始端と同じであるべきです。ここでは、装飾音符のピッチを引数に取る音楽関数を定義しています。
多声の音楽では、他のボイスの装飾音符と位置を合わせる必要があります。
repeatGliss = #(define-music-function (grace) (ly:pitch?) #{ % the next two lines ensure the glissando is long enough % to be visible \once \override Glissando.springs-and-rods = #ly:spanner::set-spacing-rods \once \override Glissando.minimum-length = #3.5 \once \hideNotes \grace $grace \glissando #}) \score { \relative c'' { \repeat volta 3 { c4 d e f\glissando } \alternative { { g2 d } { \repeatGliss f g2 e } { \repeatGliss f e2 d } } } } music = \relative c' { \voiceOne \repeat volta 2 { g a b c\glissando } \alternative { { d1 } { \repeatGliss c \once \omit StringNumber e1\2 } } } \score { \new StaffGroup << \new Staff << \new Voice { \clef "G_8" \music } >> \new TabStaff << \new TabVoice { \clef "moderntab" \music } >> >> }
参照
音楽用語集: glissando
記譜法リファレンス: ライン スタイル
コード断片集: 発想記号
内部リファレンス: Glissando
既知の問題と警告
線の上にテキストを譜刻する (gliss. など) ことはサポートされていません。
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アルペジオ
和音の アルペジオ (変則和音とも呼ばれます) は和音構造の後に
\arpeggio
を付けることによって記述されます:
\relative { <c' e g c>1\arpeggio }
異なるタイプのアルペジオを描くこともできます。\arpeggioNormal
は通常のアルペジオに戻します:
\relative { <c' e g c>2\arpeggio \arpeggioArrowUp <c e g c>2\arpeggio \arpeggioArrowDown <c e g c>2\arpeggio \arpeggioNormal <c e g c>2\arpeggio }
特殊な 括弧スタイル のアルペジオ シンボルを作成することができます:
\relative { <c' e g c>2 \arpeggioBracket <c e g c>2\arpeggio \arpeggioParenthesis <c e g c>2\arpeggio \arpeggioParenthesisDashed <c e g c>2\arpeggio \arpeggioNormal <c e g c>2\arpeggio }
括弧スタイルのアルペジオの破線プロパティは 'dash-definition
プロパティで制御します。'dash-definition
プロパティについては スラー で説明しています。
アルペジオをタイを用いて明示的に描き出すことができます。詳細は タイ を参照してください。
定義済みコマンド
\arpeggio
,
\arpeggioArrowUp
,
\arpeggioArrowDown
,
\arpeggioNormal
,
\arpeggioBracket
,
\arpeggioParenthesis
,
\arpeggioParenthesisDashed
Selected Snippets
ピアノ譜で譜をまたがるアルペジオを作成する
PianoStaff
内では、PianoStaff.connectArpeggios
プロパティをセットすることで、譜をまたがるアルペジオを作成することができます。
\new PianoStaff \relative c'' << \set PianoStaff.connectArpeggios = ##t \new Staff { <c e g c>4\arpeggio <g c e g>4\arpeggio <e g c e>4\arpeggio <c e g c>4\arpeggio } \new Staff { \clef bass \repeat unfold 4 { <c,, e g c>4\arpeggio } } >>
他のコンテキストで譜をまたがるアルペジオを作成する
譜をまたがるアルペジオは Span_arpeggio_engraver
が Score
コンテキストに追加されていれば、GrandStaff
, PianoStaff
, StaffGroup
以外にも作成することができます。
\score { \new ChoirStaff { \set Score.connectArpeggios = ##t << \new Voice \relative c' { <c e>2\arpeggio <d f>2\arpeggio <c e>1\arpeggio } \new Voice \relative c { \clef bass <c g'>2\arpeggio <b g'>2\arpeggio <c g'>1\arpeggio } >> } \layout { \context { \Score \consists "Span_arpeggio_engraver" } } }
異なるボイスにまたがるアルペジオを作成する
Staff
コンテキストに Span_arpeggio_engraver
が追加された場合、アルペジオは同じ譜にある異なるボイスにまたがって表示されます。
\new Staff \with { \consists "Span_arpeggio_engraver" } \relative c' { \set Staff.connectArpeggios = ##t << { <e' g>4\arpeggio <d f> <d f>2 } \\ { <d, f>2\arpeggio <g b>2 } >> }
参照
音楽用語集: arpeggio
コード断片集: 発想記号
内部リファレンス: Arpeggio, Slur, PianoStaff
既知の問題と警告
ある PianoStaff
の中の同時点で譜を跨ぐアルペジオと跨がないアルペジオを混在させることはできません。
譜を跨ぐアルペジオに括弧スタイルのアルペジオを適用することは単純な方法ではできません。譜を跨ぐ符幹を参照してください。
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トリル
延長線を持たない短い トリル は \trill
で譜刻されます。アーティキュレーションと装飾 を参照してください。
延長線を持つ長いトリルは \startTrillSpan
と \stopTrillSpan
で作成されます:
\relative { d''1\startTrillSpan d1 c2\stopTrillSpan r2 }
改行を跨ぐトリルは、次行の最初の音符の上から再開されます。
\relative { d''1\startTrillSpan \break d1 c2\stopTrillSpan r2 }
連続したトリルには、明示的な \stopTrillSpan
コマンドは必要ありません。なぜなら、自動的に次のトリルが前のトリルの右端となるからです。
\relative { d''1\startTrillSpan d1 b1\startTrillSpan d2\stopTrillSpan r2 }
トリルを装飾小音符と組み合わせることもできます。この組み合わせの構文と装飾小音符を正確に配置する方法については、装飾小音符 で説明しています。
\relative { d''1~\afterGrace d1\startTrillSpan { c32[ d]\stopTrillSpan } c2 r2 }
明示的なピッチを持つ予備の音符を必要とするトリルは
\pitchedTrill
コマンドを用いて譜刻することができます。最初の引数は主音符です。2 番目の引数は トリル の音符であり、括弧で囲まれた符幹を持たない符頭として譜刻されます。
\relative { \pitchedTrill d''2\startTrillSpan fis d2 c2\stopTrillSpan r2 }
小節内で最初に出現するピッチを持つトリルでは、臨時記号がナチュラルも含めて表示されます。
{ \key d \major \pitchedTrill d'2\startTrillSpan cis d\stopTrillSpan \pitchedTrill d2\startTrillSpan c d\stopTrillSpan \pitchedTrill d2\startTrillSpan e d\stopTrillSpan }
続く (同じ小節内の同じ音程の) 臨時記号は、手動で追加する必要があります。
\relative { \pitchedTrill eis''4\startTrillSpan fis eis4\stopTrillSpan \pitchedTrill eis4\startTrillSpan cis eis4\stopTrillSpan \pitchedTrill eis4\startTrillSpan fis eis4\stopTrillSpan \pitchedTrill eis4\startTrillSpan fis! eis4\stopTrillSpan }
定義済みコマンド
\startTrillSpan
,
\stopTrillSpan
参照
音楽用語集: trill
記譜法リファレンス: アーティキュレーションと装飾, 装飾小音符
コード断片集: 発想記号
内部リファレンス: TrillSpanner
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