direction プロパティ

以下の例は、最初の小節でスラーのデフォルトの振る舞いを示しています。高い位置にある音符のスラーは音符の上にあり、低い位置にある音符のスターは音符の下にあります。次の小節では両方のスラーをすべて強制的に下向きにし、 さらに次の小節では両方のスラーをすべて強制的に上向きにし、 最後の小節ではスラーの向きをデフォルトに戻します。

a'4( g') c''( a') |
\override Slur.direction = #DOWN
a'4( g') c''( a') |
\override Slur.direction = #UP
a'4( g') c''( a') |
\revert Slur.direction
a'4( g') c''( a') |

[image of music]

ここで定数 DOWNUP を使っています。これらはそれぞれ値 -1+1 を持ち、定数の代わりにそれらの数値を使うこともできまはす。さらに値 0 を使う場合もあります。この値はスラーでは UP を意味するものとして扱われますが、いくつかのオブジェクトでは ‘center’ という意味になります。値 0 を持つ定数に CENTER があります。

しかしながら、これらの明示的なオーバライドは普通は使われません。もっと簡単で定義済みのコマンドが利用可能だからです。ここに一般的なコマンドの表を挙げます。それぞれのコマンドの意味が明白でない場合は、そのコマンドの意味を述べています。

下/左上/右元に戻す効果
\arpeggioArrowDown\arpeggioArrowUp\arpeggioNormal矢印が下に付く、上に付く、付かない
\dotsDown\dotsUp\dotsNeutral譜線を避けるための移動方向
\dynamicDown\dynamicUp\dynamicNeutral
\phrasingSlurDown\phrasingSlurUp\phrasingSlurNeutralNote: スラー コマンドとは別になります
\slurDown\slurUp\slurNeutral
\stemDown\stemUp\stemNeutral
\textSpannerDown\textSpannerUp\textSpannerNeutralスパナとして挿入されるテキストが譜の下/上にくる
\tieDown\tieUp\tieNeutral
\tupletDown\tupletUp\tupletNeutral連符記号が音符の下/上にくる

これらのコマンドで中立/通常の位置に戻すコマンドは \revert を用いることで実装されていて、これらは前に \once が付いて いない かもしれません。\override を用いて実装されているコマンドの効果を単一のタイミングに限定したいのであれば、明示的なオーバライドの場合と同様に、コマンドの前に \once を配置します。

あるいは、単に 1 つのレイアウト オブジェクトを上向きか下向きにしたいなら、方向指示子の ^_ を使うことができます:

a'4( g') c''( a') |
a'4^( g') c''_( a') |

[image of music]


GNU LilyPond 学習マニュアル v2.25.22 (development-branch).