2.9.5 キエフ記譜法で譜刻する

(訳注: キエフ記譜法 (Kievan square notation) は、ロシア正教会を中心に使われている聖歌の記譜法です。符頭が四角形 (square) であることが特徴です。)


キエフ記譜法のコンテキスト

計量記譜法やグレゴリオ聖歌の記譜法と同様に、KievanVoiceKievanStaff コンテキストが予め定義されており、Kievan 記譜法で音楽を譜刻する際に使うことができます。これらのコンテキストは、関連するコンテキスト プロパティやグラフィカル オブジェクト プロパティを正しい値にセットします。そのため、すぐに音楽を入力することができます:

% Font settings for Cyrillic
\paper {
  #(define fonts
    (set-global-fonts
     #:roman "Linux Libertine O,serif"
   ))
}

\score {
  <<
    \new KievanVoice = "melody" \relative c' {
      \cadenzaOn
        c4 c c c c2 b\longa
        \bar "k"
    }
    \new Lyrics \lyricsto "melody" {
      Го -- спо -- ди по -- ми -- луй.
    }
  >>
}

[image of music]

参照

音楽用語集: kievan notation

既知の問題と警告

LilyPond は Synodal スタイルのキエフ記譜法をサポートしています。これは、Russian Holy Synod で 1910 年に作られた聖歌集で使われたもので、最近では Moscow Patriarchate Publishing House が再販しました。LilyPond はガリツィアでルシン語の単旋律聖歌に使われた、古い (より一般的でない) スタイルのキエフ記譜法をサポートしていません。


キエフ記譜法の音部記号

キエフ記譜法では、1 つの音部記号しか使いません (Tse-fa-ut 音部記号)。 これは、c の位置を表すのに使います:

  \clef "kievan-do"
  \kievanOn
  c'

[image of music]

参照

音楽用語集: kievan notation, clef

記譜法リファレンス: 音部記号


キエフ記譜法の音符

キエフ記譜法では、適切なスタイルの符頭が選択され、符尾と符幹を表示しないようにする必要があります。これらは符頭、符幹、符尾のプロパティを適切な値にセットする \kievanOn 関数によって行うことができます。キエフ記譜法の音符が必要なくなったら、\kievanOff 関数で元に戻すことができます。

キエフ記譜法における最終音符は、長さを \longa にすることで選ぶことができます。朗唱を表す音符は、1 つの音符でいくつかの音節を歌うことを示すために使用されますが、\breve で選ぶことができます。次の例では、いくつかの種類の符頭を例示しています:

\autoBeamOff
\cadenzaOn
\kievanOn
b'1 b'2 b'4 b'8 b'\breve b'\longa
\kievanOff
b'2

[image of music]

参照

音楽用語集: kievan notation, note head

記譜法リファレンス: Note head styles

既知の問題と警告

LilyPond は音符を描画する際に、符幹の向きが上か下かを自動的に決定します。しかしながら、聖歌をキエフ記譜法で譜刻する場合、同じメリスマ内の音符は符幹を同じ向きにすることが慣習となっています。これは Stem オブジェクトの direction プロパティを手動でセットすることで行うことができます。


キエフ記譜法の臨時記号

Accidental グラフィカル オブジェクトの glyph-name-alist プロパティに kievan スタイルを選択することができます。kievan スタイルは、デフォルトと異なるシャープ記号やフラット記号を提供します。キエフ記譜法にはナチュラル記号は存在しません。Synodal スタイルの音楽ではシャープ記号は使われませんが、昔の写本に使われていることがあります。この記号が含まれているのは主に互換性の理由からです。

\clef "kievan-do"
\override Accidental.glyph-name-alist =
 #alteration-kievan-glyph-name-alist
bes' dis'

[image of music]

参照

音楽用語集: kievan notation, accidental

記譜法リファレンス: 臨時記号, 自動臨時記号, The Emmentaler font


キエフ記譜法の小節線

キエフ記譜法では、曲の終わりに装飾的な記号が置かれるのが一般的です。これは最終小節線と呼ばれることがあります。\bar "k" で表示することができます。

  \kievanOn
  \clef "kievan-do"
  c' \bar "k"

[image of music]

参照

記譜法リファレンス: 小節, The Emmentaler font


キエフ記譜法のメリスマ

キエフ記譜法では、1 つのメリスマに属する音符は互いに近くに配置され、メリスマ同士は空白で区切られます。これによりズナメニ聖歌の歌唱者は、メロディの構造を素早く識別することができます。LilyPond では、メリスマはリガトゥーラとして扱われ、メリスマ間のスペースは Kievan_ligature_engraver によって実装されています。

KievanVoiceKievanStaff コンテキストが使用されている時は、Kievan_ligature_engraver はデフォルトで有効化されています。他のコンテキストでは、\layout ブロックで、Ligature_bracket_engraverKievan_ligature_engraver に置き換えます。

\layout {
  \context {
    \Voice
    \remove "Ligature_bracket_engraver"
    \consists "Kievan_ligature_engraver"
  }
}

メリスマ間の空白は、KievanLigaturepadding プロパティをセットすることで変更することができます。

次の例では、リガトゥーラを使用しています:

% Font settings for Cyrillic
\paper {
  #(define fonts
    (set-global-fonts
     #:roman "Linux Libertine O,serif"
   ))
}

\score {
  <<
    \new KievanVoice = "melody" \relative c' {
      \cadenzaOn
        e2 \[ e4( d4 ) \] \[ c4( d e  d ) \] e1 \bar "k"
    }
    \new Lyrics \lyricsto "melody" {
      Га -- врі -- и -- лу
    }
  >>
}

[image of music]

参照

音楽用語集: ligature

記譜法リファレンス: 白色計量記譜法のリガトゥーラ, グレゴリオ聖歌の四角形ネウマのリガトゥーラ, リガトゥーラ

既知の問題と警告

リガトゥーラの水平方向のスペーシングは非常に悪いです。


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